これは…チャンスじゃねえかっ!?

このまま2人が気持ちを通じ合わせて親父たちを説得すれば、さすがにこの婚約話はなくなるはずだ!!


重苦しい空気だというのにしめしめとほくそ笑んでいると、藤堂蘭子が樋口さんの前に座りその手をとった。


「私はあなたと一緒にいたかったです…っ!!」

声を震わせながら訴える藤堂蘭子を、樋口さんは切なそうに顔を歪ませまながら見つめている。


「樋口さん!簡単に諦めんなよ!!大切な女なんだろっ!?」

俺も便乗して樋口さんを説得にかかった。
控えめで頭のかたい樋口さんのことだから、ただホントに単純に会社と藤堂蘭子の将来を考えて身を引いただけだ。見るからにお互いまだ想い合っている。

正直、こんな女のどこがいいのか分からねえが、樋口さんにこのまま諦めてもらっては困る!!


「藤堂蘭子を幸せにできるのは樋口さんだけだって!俺にはできない」

できない、というよりする気もない。
俺が全力を注いで幸せにするのは結衣だけだ。しかし今はとにかく、樋口さんの気持ちを高ぶらせなければいけない。


「な?樋口さんしかいねえよ!」

「し、しかし…」

頼む!!と言わんばかりに必死な形相の俺に、樋口さんは戸惑いの表情を浮かべている。