何なんだこれは…予想外の展開だ…。

いや、でも藤堂蘭子はまだその男を諦めきれてない…頑張れば元サヤに戻る可能性がある。


「頑張れ!藤堂蘭子!まだ可能性はある!」

何の根拠もないエールを送る俺に、藤堂蘭子は泣きながら睨む。


「うるさいわね…っ…!!頑張ったわよ…。本当に婚約が進めば奪ってくれるかと思ったわ…。あんたの元に通ったり、今日だって、仲良くしてると見せつけたのに、何もしようとしなかった…!!」



この会場にいたのかよ!!

そういうことだったのか…。だからあんなに不必要なまでに寄り添っていたのか…。
だったら早く言えよ…俺だって協力したのに。



「いや、でもまだ…」

諦めてもらっちゃ困る。

説得にかかろうとする俺を遮り、藤堂蘭子は涙目で思いっきりこちらを睨みつけながら叫ぶように声を張り上げた。


「もう本当に結婚してやるんだから!!……この意気地なし…っ…!!」



えぇっ!?何で俺っ!?

思わずギョッと目を見張るが……よく見るとその視線は微妙にズレている。俺を見てはいない。

…ん?

視線の先を辿っていくと、そこには苦しげな表情で立っている樋口さんがいた。


え?


……ええぇっ!?まさか!!


「樋口さんっ!?」