「ますます意味が分からねえ…」

だったら何で俺と結婚する気なんだ!?頭が混乱してきた…。


「蘭子…?」

藤堂社長が心配そうに声をかけると、藤堂蘭子は再び俯いて弱々しく喋り出した。


「ごめんなさい、お父様…。…実は、お付き合いしている人がいたんです」

「そ、それは初耳だ…。どういうことなんだ…」

藤堂社長も驚きを隠せない様子だ。


「その方とは…数年前からお付き合いさせて頂いておりました…。将来は一緒に、と…。口約束でしたが…」

そう言って藤堂蘭子は悲しそうに微笑んだ。それに俺も思わず声が出る。


「…もう、別れたのか?」

「でしょうね……。この婚約話が出た途端、身を引くと。奪う勇気もない、黙って見てるだけの男みたいです…」

「お前はそれでいいのかよ」

「いいわけないじゃない!!何度も説得したわよ!!でも…っ…でも…ダメなんだもん…」


そして、藤堂蘭子は声を震わしながら泣き出した。