「おや?どうした、蘭子」

予期せぬ登場だったのか、藤堂社長は不思議そうにこちらに振り返った。

「銀次、お前までどうした?」

親父もニヤニヤと笑みを送りながら聞いてきた。
そんな2人に藤堂蘭子は静かに呟いた。

「お二人にお話しがあります…」


そのかたい雰囲気を察してか、脇に控えていた樋口さんが「失礼します」と、部屋を出ていこうとするが、それを藤堂蘭子は鋭い視線で遮った。

「出て行く必要はありませんわ。すぐに済みます」

「は、はい…」

そして、再び樋口さんは俺たちの後ろに控え、居心地悪そうに立っていた。


「蘭子、どうした…?」

藤堂蘭子が放つただならぬ空気に、皆何事かと不思議がっている。

俺もその1人だ。
一体何なんだ…?もしかしてこの場でもう親父たちを説得する気なのか…?
でも、それにしては少し様子がおかしい。


隣で怪しみながらその動向を見ていると、藤堂蘭子は意を決した様子で親父たちの前に踏み出した。


「……銀次さんと、すぐにでも結婚させてください」