再び黙ったまま、結衣を抱き締めていた。この無言の時間がとてつもなく怖い。

結衣の中で、俺への想いが冷めていたらどうしようか。

身勝手かもしれないが、結衣を離したくなくて抱き締めている腕を緩めることができない。


「結衣……親父のことや婚約のことは、ちゃんと片をつけるから…」

だから…だから、どうか離れないで…。

今日何度目か分からない願いを込めながら、抱き締める腕に力を入れた。


そんな俺に、結衣が静かに口を開く。

「あの人の言う通り、私が先生のそばにいたら…迷惑をかけてしまうかも…」

「……結衣…?」

「私なんて…取柄ないし、子どもだし…先生に釣り合わない…」


静かに涙を流しながら呟く結衣に、心臓が騒ぎ出し血の気が引いていく。

「そんなこと、あり得ない…!!」

「だって……自信ないよ…っ…」

そう言って、顔を手で覆いながら結衣は静かに泣いている。



「待って…結衣っ…」

結衣が離れたら…きっと俺は…。

その手を払い、繋ぎ止めるかのように抱き締めながら、泣きじゃくってる結衣の顔を見つめた。



「自信がないのは俺の方だ…結衣が離れていかないか、いつも不安で……怖い」

きっと俺は、生きている意味も感じられない。

もうムリなんだ…。結衣を離すわけにいかない…。