あれから結衣の様子が心にひっかかり、すぐに携帯で連絡を取った。

藤堂蘭子のことはただの客だと説明したが、気にしてない、としか返ってこず、放課後に呼び出して少し会った時も、普段通りで別段変わった様子はなかった。

考えすぎだったのだろうか…。

ホントに気にしていない様子だったので、俺もあまり言い訳がましく言うのはやめた。じゃああの女は誰だ、と突っ込まれたら言葉に詰まってしまう。

すっきりしないままだったが、それからお互いもうこの話題に触れることはなく、またいつも通りの日常に戻っていった。



相変わらず俺は毎日親父のもとに通い、結衣はクラスの仲間たちと勉強をしている。
一緒にいる時間が少ないのは半端なくキツイ状態だが、結衣との将来のためという、その思いだけが俺を動かしていた。

ただ、結衣に触れていないので禁断症状を抑えるのが大変だ。英語の授業中でも、そばに行きたくてウズウズしてしまう。



こうした毎日が続き、いつの間にか2学期も終わりを迎えようとしていた。今日はとうとう終業式だ。

HRを終え、冬休みの予定を楽しそうに語り合いながら帰宅していく生徒を、廊下からぼんやりと眺めていた。


はぁ…もう冬休みなのか…。少しくらい結衣に会えるだろうか…。いや、センター試験も近いし勉強で忙しいと会えないかもしれない…。ついでに親父にも会えないし…。何一つうまくいかねえな…。


はあぁ…と深いため息を吐いたその時、スーツの内ポケットで携帯が震えた。



「誰だ…」

力なく携帯を取り出し、液晶を見た。


「ぅわっ!!結衣!?」

驚きすぎて思わず携帯を落としそうになった。

結衣の方から連絡をくれるなんて滅多にない。いや、初めてだ。