結局、終始会話は弾むことなく、冷え切った空気のまま早々に食事を終わらせ店を出た。


「三神さん、今日はどうもありがとうございました」

「いえ、こちらこそ」

店先で形だけの挨拶をすませていると、ちょうど藤堂蘭子の迎えの車が到着した。


「よろしければご自宅までお送り致しましょうか?」

「いえ、結構です。学校に車を置いているので…」

この女とこれ以上同じ空間にいたくない。

酒も飲んでないし、いったん学校まで車をとりに帰ることにしよう。


「では、学校までお送り…」

「いえ、結構です。近いので」

即効で断りを入れると、藤堂蘭子がクスッと微笑んだ。


「そうですか。……まるで、私とはこれ以上一緒にいたくないような口ぶりですわね」


その通りだが、否定も肯定の言葉も返さず微笑み返した。


こうしてお互い見えない火花を散らせていた時、


「あれ〜!?銀ちゃんじゃない!?」


能天気かつ俺の大キライな声が最悪のタイミングで聞こえてきた。