「結衣、ごめんな。今日の夜も会えないんだ」


いつもの生徒指導室で結衣を抱き締めながら悲しみに暮れていると、「そうですか」と何ともあっさりとした返事が返ってきた。


……そろそろ本気で心が折れそうだ。
どこに行くのよ!!とかいう嫉妬はないのだろうか。

……試しに婚約者ができたとか言ってみようか。
いや、絶対ダメだ。
一瞬そんな考えが浮かんだが、すぐさま消去した。

結衣のことだ。「そうですか、ではさようなら」と簡単に離れていくに決まってる。そんな危険な賭けはできない。


黙り込んで考えていたら、結衣が少し身体を離して俺を見つめてきた。


「先生、大丈夫?最近元気ないから…何かあったんですか?」

「そ、そんなことは…」

結衣が俺の体調を気遣ってくれるなんて…!!
感激で胸を震わせながら、再び結衣の身体をきつく抱き締めた。


「ちょ、ちょっと先生!!学校ではあまり触れないでください!!」

「無茶言うな」


離れようとする結衣を押さえつけ、そのままキスもしてしまおうと顔を近付けたが、口を手で塞がれたためやむなく諦めた。