いつまで待たせる気だよ…。
応接室に入ってから、結構な時間が過ぎていた。

イライラしながら、落ち着かず部屋をうろついていると、ようやく部屋の扉が開き親父の声がした。


「さ、こちらにどうぞ」


部屋に入ってきたのは親父1人ではなかった。

白髪混じりの紳士な男性と………あの女。



――――やられた…。


客って藤堂の社長と娘だったのかよ…。

親父を睨みつけると、ニヤリと笑みを返される。


「銀次、突っ立ってないでちゃんと挨拶しなさい」


さすがに、この場で無視するわけにはいかない。「はじめまして」と小さくお辞儀をすると、藤堂社長は微笑んでこちらに握手を求めてきた。


「君が銀次くんだね。噂通りのイイ男だ」


その手を力なく握り返すと、横で親父が豪快に笑う。


「まだまだ未熟者ですが、根性だけは据わってますから」


俺を除いた3人が和やかな空気に包まれていた。