放課後、早速結衣に電話をかけた。おそらく勉強会はもう始まっている。今日は会えないことを言っておかないといけない。

『もしもし?どうしたんですか?』

「勉強中悪い。少しだけでいいから、生徒指導室に来てくれないか?」

『…?……はい…』

学校で電話をかけることはまずしないから、結衣が不思議がっている。



電話を切ってしばらくすると、結衣がやって来た。

「先生?何か急用ですか?」

「急用ってわけじゃないが…会って話したくて」


メールで済ますこともできたが、親父と対峙する時は精神的にかなりやられてしまう。その前にエネルギーを充電しておかないといけない。


話?と首を傾けている結衣に近付き、その華奢な手を取りギュッと握った。

「先生?」

「ああ…ちょっと問題が起きて…。これから片付けてくるから、今日は真っ直ぐ家に帰れ」

「問題って…?」


心配そうに訊ねる結衣に優しく微笑みかけた。

「心配するな。すぐ片付くから」

そう言って、結衣の唇にそっとキスを落とし抱き締めた。



……よし、行ってくるか。このままキスを続けると、離れがたくなる。

結衣の身体を離し、顔を覗き込んだ。結衣はまだ心配そうな顔をしているが、これだけは言っておかないといけない。


「清川や高杉に誘われても一緒に帰るな。必ず女子と帰れ」

「……誘われませんってば」


一瞬で呆れた表情になった結衣に笑いかけ、「じゃあな」と頬にキスを落とした。