「会って欲しい人がいるんです」

単刀直入な俺の言葉に、親父がピクリと片眉を上げた。

しん、と部屋が静まり返る。この数秒の間が緊張感を高めていた。


「……というと?」

明るくふざけた調子から一転、低く、そして静かに親父は聞いてきた。


「紹介したい女性がいるんです。大切な人、なんです」


きっぱりと言い放つと、俺の顔を見ていた親父が葉巻を口にくわえ吹かし始めた。そして、ニヤリと再び笑みを浮かべる。


「ほお…。ついに身を固める気になったのか。まさか銀次が一番だとはな」


了承してくれているのか分からず、しばらく黙って親父の言葉を聞いた。


「まあ、順番的には金一が先だが…あいつはその気が全くないからな…。で?相手はどんな女性だ?」


来た。ここが一番の難関だ…。

絶対聞かれると思っていたが…。この質問に答えたら親父はどういう反応をするだろうか…。

少しだけ怯みながら、意を決して口を開いた。