「……嫌いになった?」

「そんなことは…っ!!」

なんて嫌な男だろうか俺って。
言葉に詰まってなかなか答えようとしない結衣を追い詰めていた。至近距離で見つめ、何か言いたげにわなないているその唇にキスを落とす。


「じゃあ、答えろ」

「…うっ…なんで…」

この腕からすり抜けていかないように押さえつけるように抱き締め、再び間近でその瞳を覗き込んだ。暗闇の中でも潤んでいるのが分かる。いつもならここで俺の方が折れてしまうが、今日は結衣が困っていようが、俺も聞くまでは絶対譲らない。



「…結衣?」

いくら待っても結衣から言葉は発されない。結衣も相当頑固だ。そんなに言いたくねえのか?

……言わねえなら、言うまで責めてやる。


「結衣、好きだよ…」

僅かに微笑んで、髪を梳きながら頬を撫でた。硬直している結衣に気遣うことなく、その髪に、頬に、そしてさらに額に、こめかみに、顎先に次々とキスを落とした。


「やっ…!…分かったからっ!!……言いますから!!」

結衣が焦りながら腕を押して離れようとする。ニヤッと心の中で笑い、唇を離した。
結衣は甘い雰囲気に弱い。正直、もうこのままでも良くなったが、当初の目的を達成しようじゃないか。


「はい、どうぞ」

ついに勝った。
泣く寸前にまでなっている結衣に、ニコニコと満足感に浸りながら答えを急かした。