「ちょっと!近付かないでって言ったじゃないですか!」

「そんなのムリだ」

「誰かに見られたらどうするんですか!?」

…ったく、結衣はそればっかりだ。そん時はそん時だ、俺がなんとかしてやる。

「いいから。もう少し、このままで…」

まだ何か言おうとしている結衣を黙らせようと、その身体をギュッと抱き締めた。



そんな俺に結衣も諦めたのか、しばらく抱き締められたまま大人しくしていた。しかし、こっちは先ほどのことがどうしても気になってしまう。


「……なぁ、結衣?」

結衣は何も言わず、顔を上げた。電気もついてない真っ暗の部屋だったが、何?という表情で俺を見ているのが分かった。


「…俺のこと、好き?」

自分で言ってて思うが、なんという女々しさだろうか。
今までの彼女にもちろんこんなこと聞いたことない。聞かれることはうんざりするほどあったが、その問いに答えたことはなかった。

その質問がどれほど鬱陶しいか知っているはずなのに、聞かずにはいられない。今となっては彼女たちの気持ちが痛いほど分かる。


そんなことを思いつつ緊張しながらその答えを待っていると、眼鏡の奥で結衣の目が驚いていた。


「…今、合宿中なんですけど?」


「それが?」


そんなこと今の俺には関係ない。ここには2人しかいないんだ。