そんな外道なことを考える俺をよそに、「……さおり?」と結衣が少し不安げな声で呟いた。


「違う!あいつはただの同級生で知り合い程度の存在だ!おまけに若作りが得意な能天気な主婦で、彼女はおろか友達にも値しない人間だ」

本人がいないのをいいことにボロクソに言ってやった。


「な、なにもそこまで…」

少し軽蔑を含んだ結衣の視線をかわして続けて言った。


「彼女なんていないって言っただろ…。ずっと結衣のこと好きだったんだ。……だからあの時マジでどうしようかと思った。学校も辞めるつもりだったし…」


「うそ!?…ご、ごめんなさい…。まさか先生がそんなこと思ってたなんて…」

おろおろと謝る結衣に首を横に振った。


今この瞬間、俺の腕の中に結衣がいる。それだけでもういい。

小さな身体をギュッと抱き締め直し、その無防備な首元に顔を埋めた。


あぁ……やっぱり離したくないな…。

俺の長すぎる抱擁に、結衣は戸惑いながらもぞもぞと動いている。


「なぁ、結衣…」


未練がましいけど…。


「……やっぱり家に来…」

「行きません」


俺の言葉を遮りきっぱりと断る結衣に、ズドーンと夢心地気分から突き落とされた。