結局あの日は桐島の機嫌を損ねただけで、好きな奴は誰かは分からないままだった。

しかも、勢い余って俺を好きになれ、とか言ってしまったせいで、あれから桐島の様子も少しおかしい。

俺が口を開く度、ビクッと身体を固まらせ、警戒しているようだ。

また何か変なこと言うんじゃないのか、と思われているのかもしれない。


こんなに愛情を示しているというのに伝わらない…。やり方が間違っているんだろうか…。


「難しい…」


昼休憩の職員室、1人でうんうんと唸っていた。



桐島と約束していた食事もいよいよ明日に迫っている。
ここで、もう少し動かねぇと…。

気を入れなおして作戦を考えようとした時、周りがザワザワと騒がしいのに気付いた。


うるせぇなぁと思いつつも我関せずを決め込み、茶をズズーッとすする。

こっちはそれどころじゃない。

明日の策を練るため集中しようとした時、


「誰ですかねぇ…あれ」


芝内先生が俺に呟き、外を指差していた。


…ああ?なんだぁ?

その指の先、職員室の窓から見える校門に目を向けた。




…………あれは…



「ブハッ…!!…ゲホッゲホッ!!」

思わず、飲んでいたお茶を吐き出した。


……あれは…あれは!!

……沙織っ!?