「ちょっ…!!先生!?」

案の定、大人しく握られるはずもなく…。
桐島はその手を離そうと手を引くが、離すもんか、と力を強めた。


「いいからいいから。どうせ誰も見ちゃいねぇよ」

「そういう問題じゃありません!!」

照れているのか怒っているのか、おそらく後者だが、桐島は顔を赤くして俺を睨んでいる。


「まぁいいじゃねぇか。
……離すと、逃げそうだし」

この砂浜から。
……そして、俺の前から。

想像してしまう。
今は目の前にいる桐島が、いつか俺から離れていくことを。
それがとても恐い。
だから、こうして隣にいる今、少しでも繋ぎとめておきたい。



困惑した表情のまま、桐島は俺を見上げている。

それに優しく微笑みかけると、桐島は俯きながらか細い声で言った。

「……逃げません」


それが、この砂浜からのことを指すのは分かっていたけど、ひどく安心する。


けれど、繋いだ手は離さなかった。