「先生、こんなに遠くに来るなんて聞いてないんですけど?」

桐島が冷めた目でこちらを見る。

「まぁいいじゃねぇか!」


高速を飛ばしてやって来たのは、湘南のとある海岸。
まだ日射しは強いが、心地いい風が吹いている。
気晴らしにはもってこいだ。

「ほら!行くぞ!」

まだ不本意そうにしている桐島の腕をとり、砂浜へと降りた。


波を待つサーファーや犬を散歩させている人、砂浜で遊ぶ親子連れ。

そんな中に学生服とスーツ姿で歩く2人は浮いているだろうか、と一瞬考えたが、そんな心配も無用なほど周りは俺たちなんか気にしていなかった。
皆それぞれ思い思いの時間を過ごしている。


それに安心し気持ちが大きくなった俺は、掴んでいた腕を離し、桐島の手をそっと握った。