***


「失礼します」




保健室のドアを開けると、中には誰もいなかった。
中に入り、先輩はあたしをそっとベッドの上へと降ろして。

先輩が、保健室の先生の机を見て小さくため息をついた。





「あー…先生出張かよ。

まあいいや。
手当てすっから、そのまま動くなよ?」





先輩はそう言って、
あたしに背を向けると冷凍庫の中から氷やら棚の中から湿布やら包帯やら必要な道具を取り出し始めた。

何もすることのないあたしは、そんな先輩の背中をただぼうっと見つめているだけで。


…そんな先輩の背中が、どこか懐かしくなって。


先輩を好きになった日――4ヶ月のあの日も、こうやって先輩に怪我の手当てしてもらったなあ…





「なんかこれって、あの時みたいだな」



「……え?」




その、言葉に。
あたしはびっくりして顔を上げた。

そんなあたしに、先輩は振り向いて。





「何ヶ月か前なんだけどさ…

俺、前に一回明菜の怪我の手当てしたことあんだよね」