「…なあ、樹里。ここで何してんの?」
『あ…あたしはただ…っ!』
言い訳をしようとした樹里の態度にさえ、イラッとして。
俺は振り向いた樹里の肩をギュッと掴み、そのまま腕の力を込めた。
『…っ…』
その痛みに、樹里の表情が歪む。
樹里のそんな表情を見ても、俺は腕の力を弱めることはせず。
「…言い訳とか、いらねえから。
俺は今、ここで何してんの?って聞いてるんだけど」
…俺自身、樹里にこんなに怒りをぶつけたのは初めてだった。
俺に対して怯えたような表情を浮かべる樹里に、どこか苛立ちさえ覚えた。
「俺のことなんて何も見てない樹里が、俺を語る資格なんてこれっぽっちもねえよな?
…よっぽど、
明菜の方が俺のこと理解しようとしてくれてるよ」
分かってたのに。
痛いくらいに、樹里の気持ちなんて。
ただ、俺は弱いから。
その気持ちを、受け止めるのが怖くて。
『…っな、によ…!
この子だって、ただの遊びのくせに…っ』

![[新連載]君への想い、僕らの距離。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.777/img/book/genre1.png)