「…え…?」





それ、って…何?

頼むって、何を?


訳も分からず、先輩の顔を見上げたまま首を傾げる。

松下先輩はそんなあたしを見て、少しだけ眉を寄せて怪訝そうな顔をしてみせた。



…さっきから、いくつにも変わる先輩の表情。


あたしが見かける時は、先輩はいつだって笑ってた。
いつも笑顔で、あたしは先輩の笑った顔しか見たことがないくらいで。



――そんな顔とは、全然違う。

目の前にいる先輩は、冷めたような、冷たい視線であたしを見る。





「…何?
アンタも、その話をしに俺のとこ来たんじゃねえの?


…誰から聞いたか知らねえけど」





…知らないよ。
何を言っているのか、全く分からない。

だってあたしは――先輩のことなんて、何一つ分かってない。
外見的なものばかりで、内側は何一つ知らない。


現に、今の今まで…先輩の笑顔しか見たことなかったくらいなのに。