「――…樹里」
先輩が樹里さんの名前を呼ぶと、その肩が小さくビクリと揺れた。
…あたしも、少しびっくりした。
いつも笑ってる先輩の、こんなに低くて怖い声を聞いたのは…
多分、初めてだったから。
「…なあ、樹里。ここで何してんの?」
『あ…あたしはただ…っ!』
「…言い訳とか、いらねえから。
俺は今、ここで何してんの?って聞いてるんだけど」
松下先輩…?どうしたんだろう…
もしかして、…なにか怒って、る?
「俺のことなんて何も見てない樹里が、俺を語る資格なんてこれっぽっちもねえよな?
…よっぽど、
明菜の方が俺のこと理解しようとしてくれてるよ」
…あたしはただ、知りたかった。
先輩のことが、好きで、好きで。
この1週間の間だけでも良いから、先輩の側にいられる間だけで良かったから。
ただ、それだけで。
『…っな、によ…!
この子だって、ただの遊びのくせに…っ』

![[新連載]君への想い、僕らの距離。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.763/img/book/genre1.png)