「…ふざけないでよっ…!」
…パンッ!
乾いた、音がして。
気付けばあたしは、思い切り樹里さんの頬を叩いていた。
静かな裏庭に、やけに大きく響き渡る。
『…ったあ…何すんのよ!?』
樹里さんは。
突然の出来事に驚いた表情を浮かべながらも、叩かれた頬を押さえてあたしを睨んだ。
あたしも負けじと樹里さんを睨み返して、
思わず樹里さんの頬を叩いてしまった右手を、自分の左手でギュッと握った。
「だって…!
だって、そんなの酷いじゃないですかっ…!
…先輩の気持ち知ってて、それで都合良く利用するなんて…!」
そこまで言ったとき。
もう一度樹里さんに身体を押されて、あたしは背中を体育館の壁に思い切りぶつけてしまった。
「った…!」
背中をぶつけて少し咳き込んでしまったあたしに構うことなく、樹里さんは続けて口を開いた。
『別にあたしはね、
慎吾に付き合って、ともお金をもらって、とも一回も頼んだことなんかないよ?』

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