「…じゃあ、
お金をもらってることも…知ってるんですか?
知ってて、何も思わないんですか?」
樹里さんは、あたしの背中にある体育館の壁に手をついた。
あたしは体育館の壁と樹里さんに挟み込まれるような形になって、二人の距離がぐっと縮まった。
そして、あたしの耳元でそっと。
『だってあのお金、
慎吾はあたしのために使ってくれるんだから。
慎吾がそういうことしてくれてた方が、逆にあたしにとっては都合良いよ?』
なに、それ。
じゃあ、先輩が女の人と関係を持ってお金をもらっていたのは…
全部全部、樹里さんのためだった…ってこと?
樹里さんはただ、先輩の気持ちを利用したいだけってこと?
そんなの、酷い。
…酷いよ…!
『だからね。
お金も払わずに、慎吾の側にいるアンタは邪魔…ってこと。
いまの話聞いてれば、意味、分かるよね?』
…なに、それ。
そんなの――…
そんなの、先輩がかわいそうだよ…!

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