「いーから。
こっち来て、座ってよ」





先輩にそう言われて、
あたしはさっきの出来事もあって多少警戒しながら先輩の側へと近付いた。

先輩から少し離れたところに座り込むと。


向こうから伸びてきた、
少しひんやりとした先輩の手が。





「…っ、」



「もっとこっち、来てよ」





そう言った先輩の手が。

あたしの手を、上から覆った。


…胸が、ぎゅっとなる。
締め付けられるような、…苦しいような。

何とも言えないような感覚が、あたしにつきまとう。





「…わ、かりました…」





どうすることも出来ない胸の痛みは、
きっと治ることはない。

…いま、先輩があたしの隣にいる限り。

触れているこの手を、
あたしが振り払うことをしない限り。





「ん、ありがと」





…先輩の手を振り払うことは、簡単に出来る。


だけど――…
どうして、だろう。


あたしが…あたしの心が、それを拒むの。
どんな形であれ、触れてくれたことが嬉しいと、…そう思うの。