「いーから。
こっち来て、隣座ってよ」





そう言って俺は、
自分が座っている場所のすぐ横を指差した。

明菜は――と、言うと。


じーっと俺のことを見つめながら、困ったような少し戸惑ったような表情を浮かべている。


ああ、困ってるんだなって、分かってて。





「…嫌だったら、良いよ。


ごめんな、わがまま言って」





俺がそう言ったら。

…ほら、ね。
明菜は戸惑いながらも、おずおずと立ち上がると少し離れて俺の側にちょこんと座った。


――分かってたんだ。


明菜は優しいから、

人のことを思いやる気持ちを持っているから、

俺がそう言ったら、きっとこうしてくれるって。


――俺は、分かってたんだ。


だから、ああ言った。
明菜がこうすることを、分かってて。


ねえ、…こんなことするのは…ズルいかな。
明菜に優しくして欲しくて、その気持ちを利用してしまう俺は…



きっと、ズルくて弱虫だ。