別にゲームなんだから、今さら先輩が誰と付き合おうとあたしは気にしない。
「…まあ、ね。
確かに全員と関係を切る必要はなかったのかもね」
小さな声で、そう呟いて。
先輩は急に黙り込み、あたしの顔をじっと見つめて来た。
「な…なんですか…?」
先輩があまりにもジロジロと人の顔を見てくるものだから、あたしは思わず、座り込んだまま後ずさりしてしまう。
だけど後ずさりするあたしを追うように、先輩はあたしに近付いてきて。
「だってそこまでしなきゃ、きっと明菜は振り向いてくれないと思ったから」
え…?
それ、って…あたしの、ため?
「…っ」
…違う。そんなんじゃない。
先輩の言葉に、騙されちゃダメだ。
「そ…そんなこと言ったって…
あたしは簡単に落とされませんからね…っ」
そう言ってそっぽ向くあたしに、先輩は「ははっ」と声を出して笑ってみせた。

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