未だ訳が分からず首を傾げる恭に向けて、言葉を放った。





「…気になるヤツが、いるんだ」





樹里のことは、好きだ。

だけど――アイツの、井澤の笑顔をまた見せて欲しいと思うのも本当で。


しっかりと、恭の目を見て、そう答えた。


だって…、初めてなんだ。

俺とアイツは、違う。
それは分かってる。

だけどやっぱり、嬉しかったんだ。
外見だけに捕らわれず、俺自身を見てくれたこと。


外見だけじゃなくて、中身を必要としてくれる人。





「…それに、あの笑顔を…見せて欲しい」





保健室で、手当てをした後。
名前を教えた時、俺に向けられた笑顔。

今は、きっと向けてくれないだろうけど。


この1週間で、本当に俺のことを見て欲しい。
本当に、俺のことを好きになって欲しい。


俺のことを、受け入れて欲しい。

――初めてだから。
こんな気持ちになるのは。