『人を想う気持ちはさ、慎吾が一番分かってるはずだから。
慎吾はきっと、誰よりも、人を想うことが出来るはずだよ』




…恭は、いつもそう。

何があったって俺の側にいて、いつだって俺のことを理解してくれる。

いつだって――俺の心に、小さな優しさをくれるんだ。




「…サンキュ。

自分ではよく、分かんねえ…けど…
…嬉しかったよ、お前がそう言ってくれて」




なんだか、急に恥ずかしくなって。
俺は恭の顔が見れなくて俯いた。




『で?誰なんだよ、その好きな人』


「はっ?いきなり何…!」


『んな焦んなって。
良いじゃん別に、名前くらい教えてくれたってさ』




平然を装ってはみるものの、それは言葉に出すと動揺が現れてしまったようで、恭はまた小さく笑った。

…まあ、名前を教えたところできっと恭は知らないと思うしな。




「――…な」


『ん?誰?』


「…2年の、…井澤明菜…」




そう言って、顔を上げた瞬間。



『え…?』



恭の表情が、
固まった――気が、した。