あたしが利用されて、

傷付いて、

先輩のことを、“嫌い”になりたい。

先輩のことが“好きだ”なんて、もう絶対に言わないように。





「…仕方ないだろ、」





困ったような表情を浮かべたまま。
先輩が小さく笑って。





「…明菜のことだけは、

どうしても、傷付けたくないからだよ。
……だから嫌わないで、欲しい」





あたしの気持ちに気付いたみたいに、

あたしの心の中を見透かしたように、

先輩はそっとつぶやいて、あたしにもう一度キスをした。


あまりにも、優しくて…





「…っ…」





あたしは、涙が出た。





「――なんで、泣くの?」





先輩はそう言うと、掴んでいた腕を離してあたしの頬に触れた。
そしてそっと、頬に伝う涙を指ですくった。





「…っ分かんないよ…」





…嘘だ。
ほんとは、痛いくらい分かってるの。

先輩の優しさが、痛いだけ。

1週間だけだと分かっていても…期待している自分が、苦しいだけ。