「――そんなことしても…
俺は落ちないよ?」





先輩はあたしの腕の中で抱きしめられた体制のまま。
少し意地悪そうに、耳元で笑った。


ねえ…
あたしもう、そんなこと思ってないよ?

確かに、先輩には好きになって欲しいけど――…
ゲームに勝つために、そうなって欲しいなんて思ってない。





「こんなことで…
先輩を落とそうだなんて思ってません。


だけどっ…
側にいてあげることくらいは出来るから…」





先輩の肩が、ピクンと揺れる。

ゆっくりと離れた二人の距離とは反対に、視線だけは離れても絡み合う。





「…一人が嫌なら、あたしが側にいます。

そうやって女の子を利用して来たのなら…あたしはいくらだって利用されます。


あたしなら…どれだけ利用されても構いません…っ」





先輩。だからお願い。

そんなに、悲しい顔はしないで…
そんなに、寂しそうな表情をしないで…





「――…ありがとう」