「そんな時…
一人の女の子から、告白された。
俺はやっぱり、樹里のことが好きで…樹里以外考えられなくて、断った。
そしたらさ、言ったんだ。
“あたしのこと、好きじゃなくても良いから。
だから、あたしと付き合って”って」
あたしは先輩が話している姿を、隣で見つめることしか出来なかった。
先輩の声は、震えていて…
「…俺の家はさ。
親が社長だし、一人っ子だから、小さい頃からいつも一人だったんだ。
俺が小さい時に、母親は幼い俺を残して出て行った。
父親は仕事仕事の人だから、めったに家にいなかった。
だから俺は、親の愛情とかほとんど受けたことはない。
そんな家で育ったからさ、どんな理由でも良かった。
どんなことだって、どんな行為だって良いから、俺を必要としてくれるのが嬉しかった。
……だから俺は、好きじゃない女の子と付き合ったんだ。
好きじゃない女の子を…抱いた」

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