「樹里さんがいるのに…
そんなこと言ったらダメじゃないですか…
先輩に、そんな気がなくっても…
女の子は、そういうこと言われると…勘違いしちゃうんですから…」
だから先輩。
笑って嘘だよって言ってください。
そしたらあたし、ちゃんと諦めるから。
ここでただの暇つぶしだよって、ただの遊びだよって言ってくれたら。
どんなに楽なのに――…
「…ちょっとだけ、俺のこと話してもいい?」
「…え?…あ、はい…」
頷いたあたしに、
先輩は小さくにこりと笑って。
「樹里は、…彼女じゃないよ。
樹里が言ってたと思うけど、確かに俺は樹里が初恋の相手だった。
…でも、振られたんだ。
その時は苦しくて、辛くて…
情けないけど、自分一人じゃどうすれば良いのかも分からなくて…」
そう話す先輩の表情は、とても苦しそうで。
こんなにも先輩に想われていた樹里さんを、どこか羨ましいと思う反面。
醜い嫉妬の感情も、モヤモヤと心の中に広がっていく。

![[新連載]君への想い、僕らの距離。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.774/img/book/genre1.png)