あたしは、あのまま先輩を【最低な人】だと思って嫌いになりたかった。
ゲームなんて…始めなければ良かった。
「明菜…」
名前を呼ばれて、顔を上げると。
先輩は立ち上がり、ぎこちない動きであたしの方へと手を伸ばすと。
そっと、頬を伝わるあたしの涙を舌ですくった。
「なっ…!?」
突然の出来事に、触れられた頬を押さえてついベッドの上で後ずさりしたあたしに。
「はっ…何してんだよ」
先輩は軽くふっと笑みを浮かべて、もう一度真面目な顔つきであたしを見た。
そして――…
「俺がゲームを始めたのは…
ただの気まぐれでも、暇つぶしなんかでもない。
俺がただ…
明菜の側にいたいと思ったから。
それだけだ」
――…先輩は、ずるい。
あたしが先輩を好きだって、もう気付いてるかもしれない。
だからって…
そんなこと、言わないで。
あたしはこれ以上、叶わない恋に溺れたくないの――…

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