苦しみ

言葉なんて都合の良い

ただの道具だと思っていた。

言葉は意志を伝える手段では無くて

自分の立場を正当化するための道具。


言葉に意志は無く、意味も無い。


響きの良い言葉を並べて、

それにリズムをつければ

街に溢れてる

POP MUSICの出来上がり。


響きの良い言葉を並べて、

それを低い声で呟けば

街に溢れてる

愛の囁きの出来上がり。


僕の友達に遊ばれて、

傷付いた女が僕に抱かれる時、

決まって僕に

「好き」

と囁いた。


僕の耳を噛んで、

僕の背中に爪を立てて

僕に愛を囁いた。


「知ってるよ。

アナタが本当はアイツの事

まだ好きだってコト」


好きな男を忘れる為に、

好きではない男に抱かれる

女

それを分かっていて女を抱く

男


その矛盾を正当化するために必要な愛

その愛を形にするための言葉


僕は女の首筋を噛んで呟いた

「これでお前は俺だけのモノ」


僕に投げかけられる言葉が嘘であるように

僕が投げかける言葉も嘘。

それをお互い気付いているのに、

それに気付かないフリをして

そこに真実を見付けようとする。

その矛盾が愛を必要として、

また言葉が繰り返される。


面倒だけど、

都合の良い道具それが言葉。

そう思っていた。


「ねぇ?」

「ん?」

「嬉しかったよ。」

「ん?」

「この間、

私の事意外考えられないって

言ってくれた事。」

「ん?・・・あぁ。」

「そんな事言ってもらったの、

初めてだから。

嬉しかった。」


-これから何人もの男が

アナタにそう囁くよ-


僕の胸の上でクルクルと指を回す

あの人の髪を撫でながら

僕はそう思った。


「好きよ。」


僕の上に覆いかぶさって

あの人は僕を真っ直ぐに

見詰めてそう言った。


僕は胸が苦しくなった。


その苦しみから逃れるように

僕は温かく艶かしい肌の中に入って行った。