「ソレ、犯罪だよ」
小さな手で焼酎水割りを
グイと飲み干してトモは言った。
「うん。まぁねぇ」
仕事で付いた擦り傷だらけの手で
僕はウーロン茶を口にした。
「で、今の彼女はどうするの?」
ショートボブの頭が
ゆらゆらと揺れるたびに
甘い匂いが僕の鼻を刺激した。
「ん~、分かんない」
銀行員のトモとはお互い学生の頃
コンパで知り合った。
「最低だね。アンタ。」
進路の相談や、
恋愛相談、
仕事の不満や恋愛の不満、
上司の不満や恋人の不満、
月に一度位は必ず、
僕達はこうして仕事終わりに
一緒に食事をするようになっていた。
「まぁ、そうですね。」
小柄な体格と
コケティッシュな顔立ちの彼女は
僕を呆れた目で見つめ、
また焼酎の水割りを注文した。
「ところでどうなの?
アナタの方は?
例の営業マンとは?」
「・・・別れた。」
「はっは!」
3ヶ月前に知り合った営業マンは
年上で甲斐性があって、
優しくて、
文句の付け所が無い!
そう言っていた男だ
付き合って2ヶ月経っても
キスをしてくれない。
そう言っていた男だ。
「結局、キスしたの?」
僕はウーロン茶の入ったグラス越しに
トモを見た。
うつむきながら首を振るトモが
グラスの中で歪んで見えた。
オマエハインランダモンナ。
僕は歪んだトモにそう呟いた。
歪んだトモの体が小さく頷いた。
結局僕は恋人と別れた。
面倒な質問を何度もしてくる人だったけど、
別れる時は意外な程あっさりしていた。
「今までありがとう」
最後に投げかけられた言葉が
あまりにも薄っぺらく聴こえて、
僕は思わず笑ってしまった。
「ねぇ、今何してたの?」
「お前の事考えてた」
「ホント?」
「お前の事しか考えられないから」
「早く会いたいね!」
あの人とは週末の度に会って、
朝から夕方までホテルで過す日を続けていた。
もうすぐ梅雨がやって来る。

