2ヶ月位僕は

見た事も声を聞いた事も無い女の子と

せっせとメールをした。

面倒な質問を何度もしてくる彼女は

そんな僕を見てどう思っていたんだろう?

何度か聞かれたし、

何度か僕の携帯をいじった形跡があったけど、

適当に誤魔化す僕と、

ロックされた携帯電話に対して

彼女はそれ以上の取調べをする事は無かった。


「ねぇ、そろそろ俺達会ってもいいと思う」

「うん。でも、何だか恐いなぁ」

「俺の事、信用出来ない?」

「そんな事ないケドぉ・・・」

「じゃあ、会おう!」

「うん。」

「俺、本気でお前の事、好きなんだ」

「わたしも好きだよ」


指先が綴る言葉達。

文字が文字を引き出して行く。

そこに心が宿る事なく、

響きの良い文字が言葉となって

まるでそこに

心が宿っているかような錯覚が起こる

相手にも、自分にも。

その感覚が

さらに響きの良い文字を引き出して行く


冬の風が少し緩んで、

太陽の光が柔らかく降り注ぎ始めた頃、

僕はあの人と逢った


メールで色んな事を話していたのに

実際逢ってみると何を話しして良いのか分からなくて

僕達はぎこちない言葉を二つ、三つ交わして俯いた。

「ホテル行こうか?」

僕は沈黙に耐え切れず冗談半分でそう言ってみた。

「うん。」

予想外の言葉に戸惑う自分を誤魔化すように、

僕はあの人の手を握りホテルへ向かった。


あの日の太陽の輝きを

今でもはっきりと覚えている


あの日僕達を包み込んだ風の匂いを

今でもはっきりと覚えている


あの日の手の温もりは

今でも僕の中に生き続けている


僕が社会人になって4年目になろうとしていた季節

彼女が高校生になろうとしていた季節