夕方、夏昼が家に帰ると、兄弟全員がフォーマル着に着替えていました。

「ナツ兄ちゃんお帰り〜」

 透が最初に声をかけてきました。

「おう。透、決まってんじゃん」

 透の服を誉めてやると、透は嬉しそうに笑いました。しかし、その服は夏昼が透ぐらいの年に来ていた服なのをわかっていて言っているのです。

「アニキも物持ちが良いと言うか・・・」

 5年以上も前の服をよくこんなにキレイにとっておけるなと我が兄ながら、本物の主婦よりも凄いと本気で夏昼は思いました。

「早く風呂入って着替えて来い。父さん帰ってくるぞ」

「はいはい」

 夜昂は今日来たばかりの弟たちのネクタイを蝶々結びにしているところでした。ネクタイだと窮屈だということもあり、少々ラフな感じでアレンジしてあげています。アンバランスな形は、斬新で可愛らしいものです。

「よしっ。次は理生の番だ」

 勇獅とは色違いのネクタイ理生に結びます。双子だから同じということにはせず、理生らしい個性を表現します。この子たちと一番長く今日を過ごした夜昂は二人の個性を少なからず理解していたようです。

「ありがとうコウにいちゃん」

 勇獅と理生はお礼を言って夜昂に抱きついて懐いています。その姿を見て夏昼はふと昔のことを思い出してしまいました。