「…どうしたの?」
離れた彼の唇が、そう尋ねてきた。
でもあたしは何も答えない。
ただ無言で制服のリボンを外してゆく。
…怖かった。
こうでもしなきゃ
誰かに足元をすくわれそうで。
「…ゆの、」
手を止めたら
このココロが潰れてしまいそうで。
「…ゆの?」
口を開いたら
全てが壊れてしまうんじゃないかって。
「―――ゆの!」
怖くて、仕方ないんだもん。
ガラン、とした教室で
二人の視線がようやく絡み合う。
「……急に、どうしたんだよ。」
ブラウスのボタンを外していたあたしの手を、香椎くんが引き止めて言った。
「何か、あったの?」
切なく眉を下げて、あたしを見る彼の瞳。
だけど、あたしが欲しいのはそんな言葉じゃない。
あたしが知りたいのは――。

