それでも、まだどこかで瞳ちゃんを信じてる自分がいた。


バカらしい話だけど、どんな酷い暴言を吐かれようが、イジメという名の嫌がらせを受けようが

“瀬名 柚果は援交してる”なんて根も葉もない噂を流されようが

瞳ちゃんを嫌いになる事は出来なかった。



それはきっと

短くとも、ほんの少しだけでも二人で過ごした思い出が、あたしをそう思わせていたのかもしれない。

楽しかった記憶が、引き止めていたんだと思う。


全て、ニセモノでしかなかったのに―――。






「――果?柚果!」

「えっ?」


窓の外の羊雲を見上げて、ぼんやりとしていたら突然肩を揺さぶられた。


「何ぼーっとしてるの?ご飯食べようよ!」


振り返れば、腰に手をあて仁王立ちする菜未ちゃんがあたしを見下ろしていて。

ここが学校だと気が付いたあたしは、「ごめん」と呟き慌ててお弁当を取り出す。




教室に、香椎くんの姿は見当たらない。

それに何故かほっとした。