元はと言えば
これが始まりだった。
こんな事になった原因、とでも言うのだろうか。
香椎くんとあたしが、こんな関係になった理由。
『委員長って、実は悪い子?』
あの日以上に、後悔をした日は今までにないと思う。
その日は夏休みに一日だけある登校日だった。
高校最初の夏休み、というだけあり、登校したのはあたしを含めクラスの半分に満たない、ごく少人数で。
たまたまだった。
たまたま、落としたポーチの中身が飛び出し
たまたま、そこに居合わせた香椎くんに見られてしまった、あたしの秘密。
『タバコなんて吸うんだ。』
拾い上げ、それを手渡してくれた香椎くんに、反論する気にもなれなかった。
否定する事。
それは、この事実を肯定するのと同じだから。
『…誰にも、言わないで。』
記憶を掘り返しても
それが多分、初めて香椎くんと会話らしい会話をした日だったと思う。
秘密、なんて大それた事でもないけれど、あたしにとっては死活問題だった。
だからこそ、あたしは訴えかけるように香椎くんへ視線を向けた。
極力目立たないように心がけて来たのに、こんな事で全てを無駄にするなんて――。

