そんなあたしの胸中を知ってか知らずか、香椎くんはあたしの手を引き寄せ
「ちょっと寄り道、する?」
と、首を傾げた。
思わずドキン、と高鳴る鼓動。
なんてことない仕草でも、香椎くんが相手だと免疫が効かないらしい。
「う、うん」と言いつつ、あたしの視線は地面へ。
…ダメだ、顔が熱い。
歩き出す香椎くんに、黙って着いてゆく。
だけど、寄り道しようと言ったのに香椎くんはどこにも寄らなかった。
ただ、街をぶらつき
他愛ない話をするだけ。
たまにウィンドー越しに靴や服を眺めたりしたけれど、やっぱり最後までお店には入らず。
その内、駅に着いてしまった。
「………、」
二人とも、何も喋らない。
もしかしたら、香椎くんも寂しいと思ってくれてるのかな…。
と、声を掛けようとしたその時だった。
「香椎く、」
「…柚果?」
…え――?
甲高い声に呼ばれ、あたしと香椎くんの視線が同じ方へ向けられる。
この声、まさか…。

