それでも、すき。



待ち合わせ場所に向かうと、すでに香椎くんは先に着いていた。


え!?嘘、あたし遅刻!?


慌てて時間を確認する。

駅前の広場に備えられた時計が表示する時刻は、11時5分前。


当の本人、香椎くんは
携帯をいじりながらキョロキョロと辺りを見渡している様子。

その姿が、容赦なくあたしの胸を高鳴らせた。



いつだって、香椎くんはあたしを待ってくれてる。

あたしより先に来て、あたしを迎えてくれる。


なのに、あたしときたら――。




「ゆの!」


ぼんやりと立ち尽くすあたしに、香椎くんの視線が向けられる。

はっと顔を上げると、彼は真っ直ぐにあたしの元へ駆け付けて来た。



「何してんの、そんな所で突っ立って。」

「う、うん。」


ごめんね、と呟くと
香椎くんはいつものように笑って

「何か、変な感じ。」

そう言いながら頭を掻いた。



「え…っ、」

何か変だったかと焦って服装を確認すると、ふいに届いた言葉。