それでも、すき。



そして、日曜日。


「あら、どこか行くの?」


玄関を出ようとすると
突然呼び止められ、心臓が口から出そうになった。

恐る恐る振り返る。


「う、うん。ちょっと…、」

「そう、気を付けてね。」


声の主はお母さんだった。

お母さんがリビングに消えて行くのを確認し、改めて玄関前の鏡で全身を映す。



デニム地のコンビネゾンに、中はボーダーのタートルネック。

黒のニーハイに、靴はヒールの低めなパンプスにして。

髪型は散々迷いつつ、お団子にしてみた。


これが、あたしの精一杯。


根っからの猫毛なせいか、おくれ毛が目立つけど仕方ない。



「…よし…っ!」


気合いを注入し、いざ玄関を開ける。


外は、眩しい程の晴天。

お出かけ日和だ。



…だけど、気分は重たい。


斜めがけの小さなバックが、歩く度に跳ね。

一歩踏み出すごとに上がってゆく心拍数。


香椎くんは普段のあたしを見て、どう思うかな。

委員長じゃないあたしを…。



そんな事ばかり考えていた。