それでも、すき。



――パタン…、と閉じた扉。

あたしはそのままカバンを置く事すら出来ず、その場にずるずると座り込んだ。



窓際に置かれた目覚まし時計。

薄いグリーンのカーテンに、それに合わせた布団カバー。

その横には、参考書やら辞書がきちんと並べられた学習机。



相変わらず可愛らしさなんてこれぽっちも感じられない、殺風景な自分の部屋。


なのに、見慣れたこの場所さえ違う部屋に見えてしまう。



『日曜日、11時に××駅ね。』


別れ際、香椎くんは満足気に顔を綻ばせてそう言った。



…本当にデートするんだ。

いや、付き合ってるんだから当たり前なんだろうけど、考えた事もなかったのだ。


香椎くんと、学校以外で会うなんて。

ほんの少しも、微塵にも、考えた事なかった。



「…どうしよう…っ、」


ようやく体を起こしたあたしがまず向かったのは、クローゼット。

そこからありとあらゆる服を引っ張り出す。


だけど、出てくるのは
デートに行くには相応しくない服たちばかり。

かと言って、新しく服を買うような余裕はない。


「……最悪、」


日曜日までは、あと二日。


この二日間、あたしがどれだけ頭を悩ませたのかは

…言うまでもないだろう。