それでも、すき。




「本当のゆのは、誰にも見せたくない。」


押し倒された衝撃で、ピアノの鍵盤が背中に当たる。

ジャーン、と
耳障りな旋律が音楽室に響き渡って。



ピアノと香椎くんの間に捕らわれた時

「見せていいのは、俺だけ。」

深いキスが、あたしに落ちて来た。



「…っ、」

「ゆの…、」

耳元で、名前が囁かれる。

彼の指先が、あたしを奏でてく。



…やっぱり、香椎くんはズルい。


そんな事言われたら
あたしは素直に従うしかないじゃない。


ずっと傍に居る為に

他の誰にも、奪われないように


香椎くんに相応しい“彼女”になりたいのに。



「…んっ、大和……っ、」

「わかった?」


釣り合うように、なりたいのに。





「―――わかった…。」





そんな事言われてしまったら
逆らえなくなるじゃんか。