それでも、すき。



相変わらず心臓は跳ね上がったまま。

壁に飾られたモーツァルトが、そんなあたし見透かすように見ていた。


ふいに視線をずらし、香椎くんへ尋ねる。


「…香椎くん、」

「………。」

「…っ、大和、」

「なーに?」


最近の香椎くんは、あたしに“大和”と呼ばせたがる。

いや、むしろ
そう呼ばないと返事もしてくれない。

変なところで頑固なのだ。




「…あたし、メガネ外そう…かな。」

「メガネ?」

「三つ編みも、やめようと思うんだけど…。」

「何で?」


…何で、って。

それをあたしに言わせるの?



すると、背後から胸に伸びて来た手。


「…ちょっ、ちゃんと聞いてる!?」

「聞いてるよ。」


そう言いつつも
まるで自分の服を脱ぐように、彼の指先はあたしのワイシャツのボタンを外してゆく。



「いいじゃん、そのままで。」

「で、でも…っ、」

直接触れられた肌が、反論する事さえ許してくれなくて。


熱に翻弄されてく意識の中、あたしの耳に届いた言葉は―――。