あたしは彼の耳を引き寄せ、呟いた。

自分でもわかるくらい、顔が熱い。


まるで体中の熱が、顔に集まったみたいだ。




それを聞いた香椎くんは、ふっと唇の端を上げて

「りょーかい。」


あたしに、キスを落とした。




近道したような
遠回りしたような、あたしたちの不器用な恋。

――それでも。


「香椎くん…、」

「だから、香椎くんはやめろってー。」

「じゃ、じゃあ…大和、」

「何?ゆの。」



“キス、して”




「―――すき。」



それでも、君がすき。




「俺も。」





想いが通じ合った初めてのキスは、金木犀の香りがした。