『もしかして、これの事?』
髪を掻きあげた菜未ちゃんの耳には、真新しいピアスが光っていた。
あたしはそれを唖然と見つめ返す。
菜未ちゃんはそのピアスを触りながら、続けて言った。
『大和に開けてもらったの。』
『香椎くん、に…?』
『そっ。大和にやってもらうと痛くない、ってみんな言うから。』
ポカン、と目を丸くするあたしに、菜未ちゃんは最後に一言。
『待ち合わせ、してるんでしょ?』
いつだってそうだった。
香椎くんは、いつもこうしてあたしを音楽室で待ってくれていた。
そして、いつもあたしを受け止めてくれるんだ。
“俺のオンナになる?”
「……バカ、じゃない。」
「んー?聞こえないなぁ~。」
そんな交換条件、普通ある?
でも―――。
「ねぇ、香椎くん。」
「ん?」
「あたしも、交換条件。」
「はぁ?」