バタバタと廊下を走り抜ける。


「…っ、ごめんなさいっ!」


ちょうど下校時間の人混みに逆らうように

階段を駆け上がると、耐えてたはずの涙が零れ落ちて。


耳の奥に反響する菜未ちゃんの言葉が、あたしの背中を急かした。





『……好きな、人…?』

聞いたままの言葉を繰り返すあたし。


菜未ちゃんはそんなあたしを見て、ふふっと笑った。


『そう、飯島。でもこれがなかなか鈍いヤツでさぁ。』

『…で、でも、菜未ちゃんが好きなのは…っ、』


言い掛けたあたしに、彼女は首を横に振る。


『違うよ。』

『……え?』

『あたしが好きなのは、大和じゃない。』


聞きたかった答えを、ずばりと言われ驚いた。

驚いたのと同時に
湧き上がる、ひとつの疑問。



『で、でも…、香椎くんと音楽室で、』

『音楽室?』


ああ、と呟いた菜未ちゃんは、クスクスと笑うと耳を掻きあげた。



『もしかして、これの事?』