それでも、すき。



次の日の朝は
昨日よりももっと、憂鬱に満たされていた。

いや、憂鬱と言うよりも
どちらかと言えば、苛立ちに近い。


秋雨のせいで髪は上手くまとまらないし、ローファーは濡れるし、傘は邪魔だし。

言い訳するつもりはないけれど、今日の気分は本当に最悪だ。



「おはよーっ、柚果っ!」


散々雨に晒され、濡れた制服をタオルで払っていると、満面の笑みで菜未ちゃんが現れた。

その手には、昨日マフラーを買ったあのお店の紙袋。



…あぁ、もう。


極力にこやかに、「おはよう」と返すのが精一杯。

休んじゃえばよかった、と思う気持ちに蓋をして菜未ちゃんとは別に教室に向かう。


気分は極めて最悪最低。

色で表すなら、ブルー…いや、真っ黒、ブラックだ。



少し遅れて来た菜未ちゃんは、教室に入るやいなや、あの笑顔を振り撒きながらあたしの席へやって来た。


「昨日ありがとね!」

「…ううん、全然。」

「さっき会ったから渡して来ちゃった!」

「そっか、よかったね。」



愛想笑いは疲れる。